2009年9月15日火曜日

葛藤の有無


kattouおはようございます。駅までの朝の自転車で、半袖だと、袖口から涼しげな風が入ってくる。一日一日が秋に向かって深くなってきています。

平成おとぎ話:河合隼雄より

シンガポールは一見すると、「影のない国」にみえる。おそらくこれほど清潔な町は世界にないだろう。
町で唾を吐くとすぐ罰せられる。政府の凄い統制力のもとに、全員が美しさを保つために努力している。常夏の国なので「わくら葉」のない国だということを、同行の「立て花」のデモンステレーエション川瀬敏郎※が嘆いておられた。庭の手入れも徹底していて、少しでも葉が枯れ出すとすぐ取って捨ててしまうのである。
シンガポール大学でも話をしたが、「素直ないい学生」という感じをうける。

おそらく、あまり人生に疑問など持たずに、学業に励んでいるのであろう。
ところで、私の話をしたいもは、西洋近代の環境の中で、日本人がどれほど葛藤をかかえているか、しかし、その葛藤からこそ新しいものが生まれるのではないか、というような話を考えていた。川瀬さんの」「立て花」も極めて陰影に富んだものである。こんな影のない国はたまらないな、という気もしてくしるし、そもそもわれわれの話やパフォーマンスが、この人たちに意味あるものとして受け止められるだろうかと心配になってきた。欧米の人たちには今まで何度も話をしてじたし、反応がどうなるかもおおよそ予測できる。
川瀬さんは強い人で「駄目なら駄目でいい」位の腹をもっていないと新しいことはできないと思っているようだ。
ともかくやってみた。ところが思いの外に反応がいい。これは話をしている間に感じとることができる。それに質問も非常にいいものが多かった。「河合の話を聞いてわからなかったことが、川瀬の演技をみてわかった」というような発言があって、我々は驚いてしまった。
私はもっぱら成長に向かっている国で「生きることも大事だが、死ぬことも大事」というような話をしたのだ。しかし彼らは意味あることとして受け止めてくれた。
その後のパーティである一人の方が「政府は政府で。どんどん、近代的合理主義に政策をすすめている。それはそれで結構だが、むしろ多くの民衆はそんなことと関係なく、自分の東洋的な生を生きている」といわれたのが
印象的だった。
川瀬敏郎※http://www11.ocn.ne.jp/~kawase/

0 件のコメント: