2009年8月29日土曜日

ほうとうの話には本当はない


おはようございます。河合隼雄著:平成おとぎ話:潮出版社より→ほらふきのお手本のようです。


河合隼雄さんはホラを吹くことはまえから有名で、日本ウソツキクラブの会長であることも大分知られている。その上ホラだけでなく、笛(フルート)をふくことも知られている。
 
『アメリカのテキサスA&M大学で講演があり、その講義録を書くにあたって、その大学のローゼン教授のご自宅に滞在させてもらった。
彼はアメリカ人らしく、「ワシントンと桜の木」の話の如く、「正直」を大事にする人である。
彼がいうには私のことについて「河合はすぐれたユーモア感覚の持ち主であること、執筆の合間に笛を美しく演奏する才能をもっている人だと」とこの講義録の序に書いている。
ところでローゼン邸でフルートを吹き始めると、たしかに 小鳥があちこちから飛んできて、木の枝に一列に止まり、なにやらさえずりはじめる。これには私もうれしくなってしまった。わが家でも庭に木もあるし、小鳥もくるが、小鳥が寄ってきたりすることはない。
こうなると、日米の文化比較までしたくなるのですが、講演のあと、アメリカの聴衆はそばによってきて「いい話を聞いてとても参考になった」とかいろいろほめてくれて握手をもとめてくれる。とすると、小鳥までも違うのかなと思ったりした。

こうなると私はとてもうれしくなったので、窓をあけて笛をふいた。といっても
二重窓だったので、開けるのに、少し苦労した。そして吹き始めると、小鳥のさえずりは一層はげしくなり、ついに小鳥の一羽が室内にまでとんできて、私の耳元で囁いた。「フルートを吹くときは、窓を厳重に閉めてください。辛抱できませんので」私はさすがアメリカの小鳥は気持ちを率直に表現するものだと感心した。』と。

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