2009年6月17日水曜日
江戸を見た人
おはようございます。江戸時代が面白いのか、そのときの周防大島が面白いのか、これの話を採取した宮本常一さんが一番凄いのでしょうが・・・
今の山口県の周防大島は宮本常一氏の生まれ故郷である。そこの島の人の江戸まで旅の話です。宮本常一:ちくま日本文学より
その生活が貧しさ故にかえって気楽であったのかもしれない。島の中で通行手形も持たないで、ぶらり旅に出る者が少なくなかった。夜逃げでもなく、庄屋にもだまって出ていくのである。ひろい世間少なからずあった。村に庄兵衛という百姓は、一人ものの気楽さで、村はずれに藁ぶきの小さい家をたて住んであちこちの家の日雇い稼ぎをしていた。その男が何を思いつたか、草鞋を作りはじめ、土間に山のように積むほどに作ったが、売るためではなかった。
理由を問われ、「江戸へ行こうと思って」。江戸で何をする?「一生に一度江戸ぐらいは見ておかにゃア」。
やはり突然ではあるが、隣家だけにはことわって、村から姿消した。背中にはいっぱいの草鞋を背負うていた。彼が村をでたのは秋の取り入れがすんでからであった。
食料といえば、その方は乞食をして来るということであった。船でいく方法もあるが、これはお金がいるし、山陽道を大坂にでて、東海道を東へあるいて行く。途中の関所も一度追いちらされたが、たびたび頭をさげていたら小声で「早く通れ」といってくれたそうです。
江戸の土を踏んで、あてもなく町をあるき、江戸にいったしるしとして、浅草へいって雷門の仁王様の前にさげてある草鞋の片方をもらって帰ってきた。かえってきたのは翌年の3月だった。箱根の山の上に四里もある池があり、どうしてこんなおおきな池を掘ることができたのか、理解できなかったという。(芦ノ湖のことかしら)
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