昨日は茂田井武[絵本の作家]の生誕100年展が隣の練馬区のいわさきちひろ美術館でありました。絵本も肉筆でかいたものは直接対話しているようで、思い出の駄菓子屋のシーンでは、子供らがお小遣いを手に握りしめて、ワイワイいっている声が聞こえるようでしたし、手元にどれでもよいから原画が欲しくなりました。
宮沢和史(島唄のシンガソングライター、沖縄と南米が好き):言の葉摘み:新潮社より
1992年単身で東南アジアに渡り、ミュージカルの稽古をしていた時のことである。ある国のダンサーと親しくなった。まだその地に慣れない僕を彼らは様々なスポットに遊び連れて行ってくれた。夜が更けてくるとみんなの楽しみは「KARAOKE」。僕はめったに足を踏み入れたことはなかったが、その場に居合わせた客全員が盛り上がろうとするムードが次第に心地よくなってきた。
ダンサー達の一人に「日本の歌をぜひ歌ってほしい」と頼まれた。少し斜に構えて「みんな日本の歌なんかしらないだろう?」という返事をしてしまった。が即座に「『スキヤキ』ならここにいる全員がしっているよと言われたのだ。意を決して日本語で歌い出した。歌い終えると歌の本当の意味を知りたいと彼らはいう。「上を向いて歩こう、涙がこぼれないように」から始まり、決してパーフェクトじゃない英語で最後まで説明した。なんとダンサー達全員が目頭を熱くして黙り込んでしまった。言い忘れたが彼らの多くは同性愛者である。日頃は限られた世界の中でしか愛し合うことが許されない。どんなに誰かを愛してても報われないこともありうる。そうした生き方を選んでいる、それゆえに悲しみに耐え、涙をこらえる場面も多いかもしれない。「上を向いて歩こう」はそんな彼らの胸に、一瞬にしてしみ込み、心を抱きしめたのだ。
歌詞は聴き手が無限に広げてゆくものなのかもしれない。その夜僕は心から思った。「自分もあんな歌を作ってみたい」と。そしてその夜からこのことが自分の音楽人生における明確な、高い高い目標となった。
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