昨日に引き続いてのお話です。先日経験したのは「ひきこもりの治療」のひとつとしての「箱庭」というものでした。縦40横50深さ10cmの箱があり3cm位白い砂が敷き詰めてあります。
友人が自分の子供35歳位の人で年来悩んでいることを聞き、小生の力ではどうしようもないのは分っているものの、「オンリーワン」という会に別の友人が連れていってくれて、元引きこもり、現在引きこもり(出席しているからもう大丈夫なのですが)の立ち直るきっかけも十分にあることもわかりました。ひきこもりを多少ともわかったらいいのにと思って出席してみました。
この砂は山に、川に、野原などに見たてよいし、この上に木、滝、動物、お回りさん、
看護師、ありとあらゆるミニチュアのものが用意されていて並べる時間はほとんど制限がない。大学でも学生の不安の相談や引きこもりの心理状態や治療(制限をつけないので、何回も経験するうちに、気持ちの整理が自然に行われるようです。
前置きが長くなりましたが、今回はなぜ絵を描くのか :人間の子どもがなぜ具象画を描き始めるかはまだ明らかにされていないが、自分の描いたものの中から、偶然に何かに似ている図形を発見するという仮説がある。たくさんのお絵かきをするからこその発見であろう。チンパンジーの子どもは、母親が描いていても、人間が図形を描いても、ほとんど興味を示さなかった。画面の中に見本となる写真や絵を提示しても、その絵に触れることはあっても真似た絵を描くことはない。
人間の子どもが、他人の描いたものを真似して描くのと対照的である。 絵に限らず、チンパンジーは動作の真似も自発的にはしない。他者が持っている物に興味はもっても、それを持っておこなう動作を真似することはない。ヒトの子どもは、その行為の意味がわからなくても真似をするし、記号の意味がわかっていなくても真似て描く。
真似をする能力がヒトに特有であることを示し、その上で真似をすることが高度な知性を必要とし、他者の意図の理解や、言語を使う上でも基盤となる能力であるとしている。人間の子どもたちを見ていると、大人のしていることの真似を楽しんでしているように見える。その楽しさは、お絵かきの楽しさと共通するものがあるのではないだろうか。その基礎には、ヒトにおいてとくに進化した、自分の周りの世界を取り込み、再現する能力があると考えている。
なお最近のことだが、チンパンジーの子どもたちが4歳半を迎えて、また変化が起きた。4歳までは見向きもしなかったお絵かきに、再び興味を持ち出したのだ。チンパンジーの子どもの発達を縦断的に見ていくことによって、急激に変化が起こる時期があることがわかった。4歳半もそのひとつなのかもしれない。他の行動の変化も合わせてみていくことにより、どのような発達的変化が起こっているのか、これからも観察と分析を続けたいと語っている。
(たなか まさゆき 京都大学霊長類研究所)
(たなか まさゆき 京都大学霊長類研究所)
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