2010年1月28日木曜日
宮中で
おはようございます。メル友の便りの中ですが、[氷柱剪り]は初めて聞く言葉ですが、出入り口の前にある人の顔にまで垂れ下がった氷柱は邪魔で危ないから切らなければならないのでしょうね。
氷柱が長くなってきたのも、春に近づいている証拠なのでしょう。そう思うと切る時に春の音が聞こえるのですね。
大遺言書 :語り・森繁久弥:文・久世光彦
控え室で長々と聞かされたのは、『侍従長の入江さんがうるさいんです。直立不動で、あまり無遠慮に陛下の顔を見てはいけない。ご質問には、簡単明良に答える。咳やくしゃみは、精神力の問題だから、我慢する。前傾35度位の礼が好ましく、90度までいくと転倒するから気をつけるように。――いい加減に聞きながら、私は誰もしたことのないという「陛下への質問」の台詞を考えていました』
招かれた人たちは、立ったり座ったり、控え室から緊張のしっぱなしで連れのおかみさんが何か話しかけても上の空。もちろん森繁さんは泰然自若とその時を待っていました。
みんなヒッキリなしにトイレに立つ。宮中のトイレは老人たちの長蛇の列が出来ていた。
玉砂利を踏んで、両陛下の足音が聞こえてきます。
前傾35度の視野の中に、陛下の御御足がフレームインしてきました。入江さんが怖い声で言います。《これが森繁久弥でござます》、<これ>っていうんですよ。私のことを《いつもみているよ》《ハッ》《テレビはいろいろ大変だろうね》《ハッ大変です》《アッ、そう》もすこし洒落たことをいうつもりなのに、汗が出ます。陛下の質問は矢継ぎ早です。《舞台も大変だろうね》《ハッ、大変です》《アッ、そう》、入江さんが目で、先を促しているようです。私は意を決して《ところで陛下、この御殿は大奥だったそうですが、御手打ちになった女の幽霊がでるなんてことは----》《アッ、そう》陛下のお姿は、私の前から
消えていました。陛下は下々に質問されることはあっても、質問されることはないのだそうです。
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