2009年11月9日月曜日

事件の個人の被害者



おはようございます。11月4日成蹊大学の宮脇俊文氏の村上春樹の小説はアジアと関連して日本人の喪失感の原点はノモハン事件や地下鉄サリン事件から理解の糸口があるという講演会でした。
村上春樹の「アンダーグランド」は新聞報道で分かっている名前700人から身元が判明したのは20%(報道の病院の患者リストなどから追う)。それでももう思い出したくもない人も相当にいる。それを懸命に追った膨大な記録です。

この記録の動機は新聞の投書欄にかいてある手紙は地下鉄サリン事件の為に職を失った夫を持つ、一人の女性によって書かれていたことに始まる。彼女の夫は会社に通勤している途中で運悪くサリン事件に遭遇した。倒れて病院に運び込まれ、数日後に退院できたものの、不幸にも後遺症が残り、思うように仕事をすることが出来なくなった。最初のうちはまだよかったけれど、事件後時間が経つと、上司や同僚がちくちくと嫌味をいうようになった。夫はそのような冷たい環境に耐えきれずに、ほとんど追い出されるような格好で仕事を辞めた。
 記憶している限りでは、それほど「切々とした」という文面ではなかった。またとっくに怒っているというのでもなかった。どちらかといえば物静かで、むしろ「愚痴っぽい」ほうに近かったかもしれない。「いったいどうしてこんなことになったのかしら・・・?」と戸惑っているような感じもあった。運命の急激な変転がまだうまくのみこめずに、首をひねっているような。
 この夫婦が負った心の傷は、いうまでもなく、深く厳しいものであったにちがいない。「ほんとうに気の毒に」と心から思った。でもそれがご本人にとって「気の毒に」というだけではとてもすまされない出来ごとであることもよくわかっていた。しかし何が出来るわけでもない。

豊田利明さん、山形県出身、当時56歳営団地下鉄社員で体力を使うので週2回ほどジョギングで体を鍛えている。4時間に渡って、つらい話を聞かせていただいたが、そのあいだ愚痴や弱音は一度も口にされなかった。「自分の心の弱い面を克服し、事件のことを少しでも早く忘れてしまいたい」と語る。続く

参考以前の辺見庸氏の対談:http://efemeral-spring.blogspot.com/2009/10/blog-post_09.html

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