2009年2月12日木曜日

はるの匂い


「春に触れる野草を摘みに」から
草摘みでは野の草を活花のために摘んでくることが多かったのだが、数年前の春、家族で連れ立って川の土手を歩いていると母がよもぎを見つけた。川の水は少なく、流れの音は聞こえない
。その代わり、遠くで雲雀が大変な勢いで鳴いている。
ピーチクパーチク
ある友人は「ああでもない、こうでもない」と聞きなおした。
アチコチ アチコチ 必死 必死  必死
チイチャクチイチャク ホレホレ
意味は「あちこち行く小さな小さな鳥だけどここにいるよ、ホレホレホレ」というような感じ。
息もつかずに鳴いている。
水気と春泥の湧き立つ匂いを含んだ風が、余寒の冷たさと早春のほの温かさを同時に運んでまっすぐに吹いてくる。その音が
耳元でボワボワと鳴るのを聞きながらそろそろ歩いていたとき、ふとヨモギの香りが立つのが私にも分かった。
「ヨモギが生えている。摘んで帰ってテンプラにしましょうか」
「それはいいね。摘んでみよう!!」
ヨモギの葉はチクチクした周りの草の手触りから葉の冷たさがじんわりと伝わってくる。その葉を少し揉むと
、美味しそうな餅草の香がパッツと生まれて手元の空気をさわやかに澄ませる。その充実感でポリ袋にいっぱいにした。
三宮麻由子の季感体感より

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