2008年9月30日火曜日

水の旅


もうシャワーからお風呂になりましたが、それも蛇口から出るお湯も時間がかかるようになりました。果物も柿が美味しい。

フィリピンのマニラ北方にパンダバンガ・ダムという多目的ダムがある。貯水量23億トンで日本とはケタ違いの巨大ダムです。ところが周囲の山々には森林がない。木のないところにダムを作ってしまった。そのために降れば洪水、照れば渇水の繰り返しであった。そんな山々は見渡す限りの大森林の跡形がないのはスペイン統治領時代から100年も200年もかけて荒廃し、牛も食べぬという雑草だけが茂っている。聞けばドイツもスエーデンもフランスも緑化の試みや調査にはいったが、失敗したり難しさで断念した。そこに日本の国際協力事業団の10人の技術者が悪戦苦戦している。

日本の技術者にとっていっそう恐ろしいのが山火事であった。緑化のこの10年の歴史は山火事との戦いであった。牧草地の火入れの飛び火もあった。牧草地への火入れは、そのあとに若草が生えるからである。だが大半は放火であった。理由は木が育ってくると日本の事業所が引き揚げ仕事がなくなる不安からであった。植林の大切さを知らぬ現地人の意識との戦いであった。植林の文化を持たぬ土壌に植林の価値を分かってもらうことだった。植林地に現地人が大事にするマンゴやカシュウナッツの木を植えたが、今度は持ち帰ってしまい、自分の庭に植え直すのであった。「これは木が移動するだけのこと。植林の大切さが理解された訳だから結構です。」という理解の仕方で日本の技術者は目を細めた。「パンダバンガンの森林も、もうしばらくすれば村民の燃料に使えるようになる。そうなれば彼らも森林を大切にするようになるだろう」若い技術者がいったことばのこの確信が心に残ったそうです。  もう時代が変わって植林がうまくいっているかもしれない。

又自然とは人間が利用してこそ守られる。木を切るな、林道をつけるなの自然保護には現実には弱い面もあるそうです。

富山和子 氏の「水の旅」より

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