2009年1月7日水曜日

フィリピン事情



もうずいぶん古い話になりましたが、マルコスが追放されてから、アキノが大統領になってそれからラモスになってもフィリピン人もフィリピン社会も変わらないですね。他力本願のところが相変わらずですね。それは、カトリックのせいだと思うんですよ。何か問題があっても、心のどこかで神様とか親兄弟とか誰かが助けてくれると思っている。それとけじめがないのも同じですね。悪いことをしてもきちんと処罰されないし、言っても無駄とみんながあきらめているみたいです。うち(「ザ・ペニシュラ・マニラ」ホテル)のロビーを見ても、ですか?元大統領ラモスとエンリレ(元国防大臣でマルコス追放のクーデターを起こした有力政治家)やイメルダが同じ場所にいる?(さすがホテルのセールスマネージャーをやっているので、笑ってこたえず)財閥支配も全然かわりませんね。ここはものすごく厳しい階級社会で、それはむしろひどくなっていますよ。日本なら努力すれば上がってゆくところがあるが、ここではそうじゃないんです。自分の仕事に誇りをもつとか、どうすれば能率的にできるか自分で考えてみるとか、そういった姿勢を持ちにくい社会なんですよ。私が通っていたUP(国立フィリピン大学)にしても、昔は貧乏な家の成績優秀な子が入れたのに、今は金持ちの子ばっかりです。むかしのUPの問題は学生運動だったけれど、今の問題は、学生が乗ってくるクルマのための駐車場が足りないということですから。(笑い)

 「マルコスが逃げた」というテレビの報道があったとき、群衆の中から、自然発生的に「バ・ヤンコ」(「我が祖国」といスペイン植民地時代につくられた独立運動歌)が始まったんですよ。「あっ、この国は私の国じゃないんだ」と感覚的におもった。

日本は給料がいいのに、「貧しい」感じがするんですよ。人間らしい生活がしにくいじゃないですか。自分で考えて行動しようとすることが、なかなかできない。日本で一生懸命働いて、日本で死ぬのが当たり前という価値観はまだまだ強いし、その価値観を疑わせない社会になっているでしょう。私は、物の見方がもうこっちの人の物の見方になっているところがありますから、日本に帰ったとき、駅のホームでみんなが同じ方向に向いて電車を待っている姿なんか見ていると、フィリピンのほうがのんびりしていいなと思いますと。

アジア定住(11ケ国18人の日本人):野村進、井上和博、5つ星ホテルの女マネージャー/来田喜子より

のんびりしていながら、クーデターがあったりしたのは行動力のある上層部内の対立があったためなのか・米軍撤収などやることはやるんですね。

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