2009年3月24日火曜日

山の物語①


おはようございます。山の物語であっても、山なら背くらべしたくなるでしょうし、その粗筋の物語には感心します。

富士山に対抗して、関東からは筑波山、東北からは岩手富士、津軽富士、など続々名乗りをあげた。

だがいずれもあっけなく、敗退した。ところが加賀の白山だけ裏日本の山々に勝ち進んできたその偉容を誇って、堂々と勝負を申し込んできた。日本中の山は思わずカタズ
を飲んだ。
「これはどちらに軍配があがることだろう」「いやア、予測さえつかないね」「富士はすらりとしているから高そうに見えるが、実際には白山に分がありはしないのかのオ?」
「いやいや、富士山は真実たかいぞヨ。」雲より上に顔を出すほどあるからのオ・・・」
こうした講評はあちこちでささやかれたが、結局だれにもその判定はできかねていた。そこで審判を選出することになった。すぐに名乗りをあげたのが、甲斐の白根山と八ヶ岳で、それに信濃の御嶽さんが加わっていよいよ最終決定戦を迎えた。諸山はこれを見ようと背伸びをし、顔を出し、湧きあがった。「それでは・・・」審判の一人が口を開いた。ざわめきは消えて行き、緊張した空気が漂った。水をうったような静けさの中で。
「ただいまの測定結果を申し上げます」審判の声は重々しい。
「富士山と白山とはまことに同等なものでありまして、その決定が困難なのであります。」ワアと緊張は緩んだ。東北の山々も関西の山々それぞれに自分たちの主張をして騒ぎ始めた。
「えー、静かに。そこで・・・・・二つの山に樋をかけることにしました。」樋?あまりに唐突な言葉に、みんな口をつくんだ。「水のながれる方向が低い山になります」
そして水を流す役目が御嶽さんにきまった。水が注がれると水が双方に流れた。皆がかたずを飲んで注視するその水があるところで急にとまった。富士さん側から水が後退して白山に流れている。あわてた白山側は一人ワラジをぬいで樋にさしこんだ。すると水は平衡となった。そのときすばやく審判の声は「富士山の勝ち!」しばし拍手は鳴りやまなかった。がっくりと白山は泣き崩れた。こうして山の背くらべは終わった。だがこの負けた白山には諸びとは、登山のとき山頂で新しいワラジにはきかえ、古いものは積み上げて下山するという習わしを残すことになった。

富士山歴史散歩:遠藤秀男著:羽衣出版

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

白山信仰と富士山信仰の違いは何処にある野でしょうか。
結構関東にも白山神社は数多く有ります。
私は日本海側より信仰で出雲神社と同じく朝鮮文化を引いているかな思っていますが?