2009年3月8日日曜日

笠智衆さんは半分仏様



城山:だからその逆のタイプの笠智衆さんみたいな、とにかく台本を覚え込むのに、一生懸命という、不器用な人のほうがむしろいいんですね。
山田:笠さんは本当に謙虚な人でしたね。亡くなるまでずっと、ご自分のいたらない役者だと思っていたんじゃないでしょうか。
城山:それは凄いものですね。
山田:80近くになられたころでしょうか、ロケーション先のいつもの食事をするお店で、上等な牛肉のステーキを作ってくださったことがあるんです。笠さんはそれを食べながら、「ああ何年ぶりでしょうか、こんなおいしいお肉をいただくのは」と言われる。ぼくは健康上の理由かと思って「お医者さんい禁じられているんですか」と聞いたら、笠さんあわてて「いえいえ、私のようなつまらない役者はこんな上等なものはいただいちゃいけないんです」とおっしゃるんですよ。
城山:ほう!
対話:山田洋次:1「人生はつらいか」より

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