2009年3月17日火曜日

タイの国のお話②


おはようございます。もう辛夷の花が拳のを広げる寸前です。今日も暖かいのでもう開くかもしれません。
タイの首都バンコックである教授から聞いた話があった。カンティア・アサットは父親が日本の大使の娘だと100日も大学生の
前で、詐称し大学生を煙にまくほどの能弁家だった。なんかの弾みで露見してしまった。怒った大学生は少女を警察に突き出したが、彼女は逮捕も、補導もされなかった。たいした実害がなかったことが、その理由だった。この少女にあって話を聞いてみたくなってこの物語は始まる。
   まず大学にいって大学の部長にあったが、真っ先に信用したのはその部長だった。かれの話によると、一通の書類をみせてくれた。
『ユウコは日本の大使の娘で、現在はタイ国内の視察のために、各地を旅行中である。わが国民に、彼女から依頼があったときは丁重に応対するように要請する』とちゃんと活字の文書で、役所の便せんだった。大学の隣の市営スタジアムの管理事務所で拝借したスタンプまであった。誰だって疑うよりも、興味を抱くじゃありませんか。
カンティアはここでも赤いトレナー姿だった。152.3cmのポチャとした少し小柄な女子大生のように見えた。彼女はペラペラ日本語をしゃべってみせた。学生等と話すとき、タイ国王一家とも親しく、私の父が大使として、着任したときに、私はシリントーン王女からタイ語を教えてもらったともいった。もうこうなると、タイ王族とも親しいとなると、大学生等も軽率な言葉を慎まねばならない。
12歳かそこらで北部の田舎からバンコックに働きに出てきた少女は
誰も見向きもされない子供にすぎなかった。それがいまほんの一言、日本人のユウコと名乗り、日本大使の娘だというだけで、こんなにもみんなに注目され、大事にされ歓待されたのだと。
学生が雑誌で東京の原宿ってどんなところですかと聞いた時があったが、「日本ではタイの国王にあたる高い地位の人の親戚で暮らしているので、庶民の集まるところへは行ったことがない」といってた。
日本人ごっこ:吉岡忍著より

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