2009年3月7日土曜日

映画人の苦労


おはようございます。昨日の米国映画は実際にあった話だそうで、仕入れた在庫を売りあぐねていた。奥さんに愛想を尽かされ離婚となった。ついにはホームレスにまでなって、公衆トイレで寝る子供を抱きながら涙し、4ケ月無給の研修をうける間は、在庫品をなんとか処分しつつ、ついにはセールスも証券会社になんとか就職できて高額の年収を得るようになったアメリカらしいドリームの物語の映画だった。これも面白かったが、この山田洋次監督と城山三郎氏との対談も面白かった。

【対話:山田洋次:1.人生はつらいか】より

山田:ボクたちの常識では、俳優がどこに座るか、どういう風に動くか、キャメラをどこに置くかそういうこ   とを監督が指示するんですが、溝口健二監督はそれもしないんですね。
   仕方がないので俳優が助監督と「どうするんだ?」「こうしてみるか」などと相談して、とにかくやっ   てみる。聞いたところによれば、溝口さんに「どうです?」って聞くと「ダメです」。「ダメです」だ   けは言うんですって、はっきり(笑い)。
   一日も二日もかかって「ダメです」の繰り返しだから、しまいにみんな腹がたって、「あのクソ親     父!」という感じになる(笑い)。ある助監督さんは「あれは溝口さんの映画じゃない、オレたちがつ   くった映画ですよ」なんていっていました。ところが、ぼくたちが溝口さんの映画をみると、もうファ   ーストカットから溝口健二の作品なんです。

城山:監督本人も言ったほうが簡単なんじゃないんですかね。

山田:いえぼくは溝口さんご本人にもどうすればいいのかわからなかったんだと思います。俳優も懸命に工夫   するうちに「あ、それいいな」と思う。そういうことだと思います。あるいは俳優の衣装一つについて   も、「それじゃあらたまりすぎるんだけど、もっとラクな服装はないかい」とい言い方しかしない。
   「監督なんでもおっしゃってください。あなたのいう通りにします。」といわれるのが一番困るんです   ね。「君自身にアイディアとかやり方があるだろう。それをぼくは期待するから君と一緒に仕事するん   だ」ということが時々ありますけれど。

城山:そうやってスタッフといい循環が生まれ、自分たちで勉強して、自分たちで知恵を出し合う、みんなで   育っていくわけですから。ただし一つ怒るのは自信過剰のやつ。

山田:伊丹万作さんの本に書いてあったことなんです。俳優をしかる理由は何もない。みんな一生懸命やって   いるのだから、どんなひどい芝居をしてもまず認めてやれ。ただひとつだけ叱らなければならないケー   スもある。それは自分がうまいと思っている俳優だ。つまり芸術の高みからみればどんな仕事だってパ   ーフェクトでありうるわけがないのだから。自分はうまいと思っている俳優は叱って、その自信がどれ   ほどでもないということを気付かせるべきだ、ということですね。

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