2007年10月28日日曜日

風のような物語(写真家・星野道夫)

フリー写真はゆんふりー提供
アラスカに米兵として駐留していたが1948年兵役から解除される。そのときボブはエスキモーのキャリーと結婚していた。21歳のボブはある決断をしようとしていた。
軍隊の生活に疲れたが、アラスカにとどまることで燃えるような生活が満たされるのではないかと考えていたのだった。そしてキャリーとの狩猟による自給自足の生活が始まった。


ボブの話し方は自然だった。今の時代に投げかける疑問も素朴で、かえってそれが説得力を持っていた。
「昔、エスキモーの生活の中心はカリブー(北米ではトナカイをこう呼ぶ)であり、カリブーがすべてだった。エスキモーは季節とともに、カリブーを追った。
人はカリブーとの関係で精神的な充足を得、そこには完成された生活があったんだ。しかし、いつしかそこに西洋文明とともに貨幣化経済が入り、人とカリブーの関係が弱まる中で、人々は精神的な充足を新しい価値観に求めるようになっていった。けれどもその新しい価値観はカリブーと違い、求めてもつかまえることができず、完成された生活からはどんどん遠去かっていってしまった」いつしかボブは、彼の生活観を話し出していた。

「何もなかった時代は自分の生活圏以外のどこにも刺激を求める必要はなかったんじゃないかな。それは日々の暮らしの中で向こうから飛び込んできた。日常生活で求めたいたのは、刺激より休息だったんだ。けれども、今の時代、すべてこのことが決まりきっている。明日のことも、その先のことも・・・・・。それでも生きていくことができるというのは、自分にとって大切なことだった。
カルフォルニアにいた頃、生活はすべて他人から与えられていた。食べるもの,着るもの・・・。そんな生活はおかしいと思っていた。人生にはもっと意味があるはずだと思っていたんだ。」

アラスカ「風のような物語」写真家星野道夫著より
素晴らしい写真集です。生命の愛おしさが伝わってきます。
http://www.michio-hoshino.com/

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