2008年2月23日土曜日

眠れない




不眠症の大学生達を2つのグループにわけての実験です。乳糖を用いた偽薬を用意しました。
この乳糖は睡眠や不眠という点に関しては、別に特別の効果はありません。
Aのグループには「この薬は生理的に興奮を高める。体温が上昇し、ドキドキするかもしれない。」と教える
Bのグループには「この薬剤は生理的活動を低下させる。寒く感じるかも、心身をリラックスさせる。」と告げる
結果として、床に着いてから就寝に要した時間をみると、興奮するよと教えた方がむしろよく眠られたのに、
リラックス条件の方ではなかなか眠りにつけませんでした。これは普通の偽薬の場合とまったく逆になっています。
タネを明かせば、興奮条件の「能書き」は実は不眠症の症状と同じなのです。そこで被験者は、就寝時に強く自覚される
生理的興奮を100%薬のせいにできます。副作用だから寝むれないのは当然と考える。一方リラックス条件の方は
鎮静剤を飲んだのに、依然として興奮を自覚するので、不眠はむしろひどくなってしまうことになります。
この実験も生理的興奮の方からみるのではなく、不眠症の症状は両群とも同じ筈なのに、それを薬の副作用をどう認知するかによって
違うということになります。この就寝時に自分はどうでしたかを尋ねると、A群はふだんより興奮気味とこたえ、B群は鎮静気味と答えたといいます。
いわゆる偽薬効果が現われていたのです。実際の行動と、本人の意識や言葉による報告とはことなるということになります。いわゆる言っていることと、やっていることが違うのです。


人は自分の気持ち・行動の本当の理由を案外知りません。結局自分で意識したことしか自分の行動がわからないし、分からないで動いているらしいのです。
サビリミナル・マインドー潜在的人間観のゆくえ:下條信輔著

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