2008年1月18日金曜日

なぜ思いつきの開発しかできないのか


イギリス人の格:井形慶子:集英社より

なぜ思いつきの開発しかできないのか。イギリス経済が順調に発展いてゆく様子にイギリス病という斜陽の時代を転換させたサッチャー政権を褒めたたえる人は多い。日本にもあのような強靭な意志と聡明さを併せ持つ政治家がいたら・・・。
これは政治家の能力の問題だけではないと感じる。有能なリーダー、力ある政党、新しいシステムが生まれる根底には、豊富な生活知識と、それを整理する専門家が必要だ。私達がお金を使うことに躊躇したり、ときに暴走と思えるほどの浪費を繰り返すもは「需要とともに広がる供給」というバランス感覚が日本に定着していないからだと親日家のジャーナリストは語る。「これさえクリアできれば、どんな国の人々でもお金に困ることはなくなる。それがイギリス式街作りの法則があるんだ。」ところが市場調査の末に作られたはずのショッピングセンターや大型ストアはある日突然消えてしまうことがある。最近ではわずか1年に全国の大型スーパーが約200店舗が次々閉鎖、撤退している。しかも大型店舗によって客を取られた地元商店は既に廃業に追い込まれている。こんなブルト-ザー式商戦に引っかき回されたあげく、放り出された住民はたまったものではない。スーパーが閉店し、近くに買い物を求める老人の姿は痛々しい。この問題はスーパーの抜け殻となった建物はスラム化や犯罪の温床になってきている。
少子化日本で独り勝ちしている住宅は都心のマンションと言われている。郊外の戸建はチラシをまいても、値段をさげても客がつきにくい。こんな勢いまかせの開発によって崩された地域の人々の生活や経済のバランスは元に戻らない。マイナスだらけの誰もとくをしない開発。それを未然に防ぐ街つくりをイギリスで見つけた。ケンブリッジではもともとあった街の外角をすこしづつ押し広げていく他のイギリスの街と同じ開発方法で住宅をたてていった。「街はいきものだ。広い空地があるからと、1拠点に集中して住宅や商業施設をつくったらもともとの街の機能が崩れてしまう。そう説明する都市プランナーは「ネガティブ・アンエンプロイメントの法則」を教えてくれた。「たとえば、このケンブリッジに5000人の従業員を雇用したい企業がやってきたとする。それに対して住宅が3000しかなければ企業は2000人の人出不足となってしまう。その結果ビジネスが成り立たず、企業は他の街に誘致されてケンブリッジから出て行ってしまう。こうして街は大事な法人税を落としてくれる企業を失ってしまう。逆に5000人がすんでいたとしても3000人しか雇用ができない場合は仕事不足になる。企業を誘致する段階で、雇用者と住宅のバランスを取るかが、街を健全に生かし続けるポイント。それをコントロールする都市プランナーの役目は政治家以上に重要だといった。

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