2008年1月30日水曜日

血と油その3


外国からの石油需要を減らすための持続的かつ包括的なエネルギー戦略を採用したことはなかった。つまり石油の持続的供給を「国家安全保障」の問題と位置づけ軍事力の行使を通して防衛しうるものとしたのだった。米国は98年4月に外国石油依存度が50%を超えた。2030年には70%に達すると見られている。世界の需要を満たすためには、ペルシャ湾岸以外の多くの地域では生産量が頭打ちになったり減少したりするため湾岸産油国全体
1日当たりに換算して1999年の4450万バレルを80%増の2050万バレル増産して2020年には4450万バレルにする必要がある。それに例をサウジアラビアにとれば2020年までに倍増の生産量にして達成させることが必要になる(湾岸諸国が裕福とはいえどこれに応じるに、生産インフラには2001年から2020年までの間5230億ドルもの設備費用が必要となるので、こんな巨額の資金の投資を受け入れるには湾岸諸国が考えていることである国有のエネルギー部門完全支配を維持する長年の決意に背くことになる。外国企業の参入を制限している国もある)
ブッシュとチェイニー政権が唯一引き出すことができた結論はペルシャ湾岸諸国には自国の力で石油を増産するとともに、国外への供給経路を守る意思も能力もないというものだった。政府のエネルギー計画を成功させるには、アメリカは湾岸地域で支配的立場に立ち、主要生産国の政治と治安の油田を監督する責務を負わねばならない。採掘量最大化戦略を成功させるにはその増産部分が自国やその他の主要消費国の手に無事に渡るように米国は万全をきさねばならない。つまり危険にさらされている湾岸の同盟国が危険にさらされているならばテコ入れに脅かすものはすべて抑え込まねばならない。三つの課題があった①サウド家のサウジアラビアの政情を安定させる②イランのフセインを失脚させ増産可能な新政府を樹立する③イラン政府に最終的には親米政権を出現させる。
米国内の事情をみれば石油消費量は交通・運輸に多く、アメリカの膨大な数の自動車、トラック、バス、飛行機、列車、船につかわれる燃料の97%が石油製品だ。これほど石油は米国の血液(日本でも同様)になっている。これほど手軽な効率のよいエネルギーがほかにないからなのだ。
「血と油」アメリカの石油獲得戦争マイケル・T・クレア(米国屈指の紛争アナリスト)より
写真は蒲郡市博物館絵手紙展より

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