2008年5月16日金曜日

国民性は遺伝子からも


アメリカは自己主張しないとやってゆけない国で、特に、話術の巧拙が人の人生を大きく左右する。人の話を聞く前に人に自分の話を聞かせる、という生活哲学が支配している。
無理もない、と今にしておもう。それぞれ違う言葉や生活習慣をいちいち時間をかけて理解しようと考えたら、この土地には何年かかっても統一された国家など生まれなかっただろう。なによりもまず、自分の考え方を人に押し付け、あるいは聞かせたほうが、物事はよほどスピーディに運ぶ。アングロサクソン人はそのことに、ほかのいかなる民族よりもたけていたのかもしれない。アメリカ社会が外部の人に暴力的な印象を与えるのは多発する犯罪のせいばかりではない。おそらく、会話の一方通行性に多くの原因があるのです。相手をたたきのめす会話能力、そして雄弁さ、これこそが、アメリカで生きる武器なのである。
石川好著「ストロベリー・ロード」より(120p)


日本の文化の本質は形から入る。中国から漢字を取り入れた太古の昔から、形から入って行くという基本戦略は日本の文化が形づけれているように思われる。盆栽的なものというか、理屈ではなく、時間をかけて形を磨いてすりあわせて文化をつくって行くことをずっとやってきたという。その背景には、日本が強い安定志向をもっているから。最近の遺伝子の研究で分かったことは生体的な理由もあります。生物学的に、日本人はセトロニン輸送体というものが余りないことがわかってきています。この輸送体の働きは、例えば困ってしまったとか、嫌なことが起きたとか、ストレスが起きたときに、頑張るぞというように活性化するという、それはもともと人間の脳にそういう仕組みがあるんですが、そのためのセロトニンを運ぶという、そういう輸送体が少ないタイ
プのS遺伝子と多いタイプのL遺伝子というものがありますが、その組み合わせで日本人にはSS型が7割、だからほとんどそういうものがない。それとSL型をいれると、ほとんどすべての日本人、もちろんこれは統計的なものですが、国民のほとんどが遺伝子をもっているんですね。そういうことが、最近わかっています。これにたいしてアメリカ人は日本人にはほとんどないLL型が3割もいて、逆にSS型は2割たらずということですから、困った時に跳ね返す力の遺伝子的な力がある。日本人を統計的にみると、だめになったときの落ち込み方が非常に激しいということは先天的なものだと思われる。文化とか教育や制度とかで国民性が形づけられるというよりも、そういうタイプの国民が多いことから、それに合わせて文化とか教育や制度が作られるという考える方が、自然科学をやっている方からすると、自然であってそういうようにとらえたくなるわけです。でどういう文化になるかというと、簡単にいえば、大きな変化を自分から起こせない、安定を望む文化になるとことになります。
坂村健東京大学院情報学環境教授、伝統文化活性化シンポジウム、日本文化の未来像H19年11月10日財団法人伝統文化活性化国民協会主催
http://www.kokuminkyokai.or.jp/

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