2008年4月4日金曜日

型にこだわり心に至る


高橋睦郎※さんというひとが歌舞伎についてこんなことを書いていました。舞台をみてもいっていることが分からないかもしれませんが、何となくそうだろうないう思いがあります。
舞台の充実

「型にこだわり心に至る。」げんざい女形の頂点にたつ中村雀右衛門丈(85歳)の舞台に触れた。
丈の体調を考慮してか藤間勘祖の振り付けは思いきり簡素になっている。それだからこそ踊りの骨格そのものがあり、その骨格から幻の花が顕(た)ちひろがる。世阿弥の「せぬ手立」という言いようを思い出した。雀右衛門丈は自らの意思で「風体を浅く」「手をすくなく」したわけではなかった。体調のせいでやむをえず風体を浅く手を少なくした。それがたまたま世阿弥のいう「せぬ手立」に合致したのだ。
しかし丈にはその先があった。それから10日あまりのち丈の同じ舞台を覗き、驚きをあらたにした。一日一日の舞台の積み重ねを経て丈は心身の力を充実させ、踊りの力を充実させていたのだ。
わが国の伝統芸能の基本は先人からの型だ。型はいってみれば器のようなもの、体調の十分ではないときに支えになってくれる。そして体調が充実してきた時には、その中に注ぎ込めば注ぎ込んだだけ満たしてくれる。時として型から離れることも許してくれる。これは私は型の慈悲と納得した。



丈さんの立姿は写真ですが下記HPの「ライブラリー」で、人生記は波乱の履歴書でご覧になれます。(動画がないのが残念ですが・・)
http://www.kabuki.ne.jp/jakuemon/


※高橋睦郎の略歴:1937年福岡県に生まれる。福岡教育大学卒業。詩人。
62年上京し、学芸の諸先輩に学ぶ。詩、短歌、俳句、能、狂言、浄瑠璃、オペラ台本など、ジャンルを超えて創作活動をつづける。近年は古典の尖鋭な読みなおしで注目される。詩集『王国の構造』で島崎藤村記念歴程賞、詩集『兎の庭』で高見順賞、句歌集『稽古飲食』で読売文学賞を受賞。2000年度紫綬褒章受章。

写真は山形県鶴岡市に先端生命科学の関する慶応大学のキャンパス

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