2008年1月2日水曜日

敵意を超えた勇気


敵意を超えた二つの勇気
  米国のイラン攻撃が取りざたされている。そんな中でイランのアフマディ・ネジャド大統領が国連総会に出席した際、米国コロンビア大学で講演をするという出来事があった。この事について10月1日の毎日新聞「東論西談」がニューヨーク支局の小倉孝保記者の報告として掲載している。実にいい報告だ。国際政治もまんざらではない。  小倉記者は問う。「独裁指導者がずらっとならぶ中東にあってアフマディ・ネジャド大統領は選挙で選ばれた指導者だ。しかもイランは9・11には関与していない。なぜこれほどまでにイランの大統領は米国に嫌われるのか」と。それは米国の外交を左右するイスラエルにとっていまやイランが最大の脅威であるからだ。  講演前、コロンビア大学には「独裁者に発言を許すのか」と中止要請の声が相次いだが、大学側は、「考えを異にする者にも発言の機会を保障することこそ我々の信条」とはねつけた。この大学側の勇気がいい。その一方で、ボリンジャー学長は、ゲストであるアフマディ・ネジャド大統領におもねることなく、「狭量な独裁者」と批判したという。これも毅然としている。  そのアフマディ・ネジャド大統領は、会場にあふれた5000人超の学生の前で、たった一人でステージに立ち、話し、質問に答えた。  「どうして核を持っている国が、持たない国に対し核を持つなと迫れるのか」、「欧州の問題のツケをなぜパレスチナ人が支払わなければならないのか」などと第二次世界大戦後の欧米主導の世界秩序への疑問を投げかけた。講演の内容は殆どが真剣に考えるに値する内容で、聴衆からはしばしば拍手が起きたという。  小倉記者は書く、「一国の指導者が、敵視されている国に乗り込み質問を受けることが、どれほど勇気がいることか。それは日本の首相が北朝鮮で講演したり、ブッシュ大統領がキューバの学生の質疑を受けることを想像すればわかるだろう」と。  演説後、小倉記者は学生に聞いて回った。「イランの指導者が何を考えているのか直接聞けて良かった」、「言われているほどむちゃな大統領じゃなかった」、といった感想が多かったという。  そして小倉記者は締めくくる。  「コロンビア大学とアフマディ・ネジャド大統領が示した二つの勇気が、敵意を書きたてようと扇動するメディアを凌駕した」と。政局に明け暮れる日本の政治家がなんと矮小に見えることか。

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